R2年 小学生クラス説明会

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園長からのメッセージ

シリーズ5 2010年2月発信

時はいつも均等に流れているはずなのですが、年が明けてからの年度末の時の経つことの早さには焦りを感じざるを得ません。

春の訪れと子どもの巣立ち
2月19日は24節気では「雨水(うすい)」でした。子どもの家の玄関にも張り出してありますが、「空から降ってくるものが雪から雨に変わり始める時期。積もった雪も底の方から解け始める時期。暖かい地方ではそろそろ鶯の鳴き声が聞こえ始める時期。つまり、はっきりと春を感じさせる時期がやってきたということです。
日本では春が年度の変わり目です。年長児は幼児期から学童期へ、小学校へ巣立っていく時期でもあります。小学校に通い始めると幼児期と異なることはいっぱいありますが、何と言っても本格的に学習、お勉強が科目に分かれて体系的に始まることが大きな違いでしょう。
とは申しましても、モンテッソーリ教育ではすでに幼児期から「お仕事」の一環として言語教育、算数教育、そして文化教育という小学校での学習につながっていく活動を子ども達は数多く行っています。義務教育が小学校から始まるので、あたかも学習も小学校が出発点で幼児期は楽しく遊んでいればよいという見方がまだ残っています。しかし、子どもの発達はある年齢になってから急に何かが始まるというものではなく、命を授かった瞬間から連続してくるものです。制度があって、それを子どもに当てはめるのではなく、子どもの存在があって、そこに子どもの発達に見合った制度を作り上げていかなければいけません。このあたりの考え方にまだまだ旧態依然としたものが残っていることがモンテッソーリ教育の普及を阻んでいる一つの要因になっています。

乳幼児期のみならず、一生涯を通して必要なもの
モンテッソーリ教育を通して育って欲しい子ども像は、「自立していて、有能で、思いやりと責任感があり、一生涯を通して学び続ける姿勢を持った人間」です。重要なことは、自立や有能感、思いやりや責任感は周りの大人が教え込んだり、訓練して身に付けさせることではなく、子ども自身の自発的な活動によって獲得されていくものだという点です。ですから、モンテッソーリ教育現場である子どもの家では手取り足取りやってあげてしまうのではなく、子どもが自分でできるようになることを援助するのです。家庭で周りの大人が手を出しすぎている子どもはどうしても依存度が高くなります。ある程度時間が掛かっても子どもが自分でできたという瞬間をじっと待ってあげる忍耐心が大人には必要です。自分で「できた」時に子どもは有能感を、つまり自信を身に付けていくのです。これが「意欲」、「やる気」につながっていきます。一生涯を通して必要なことはこの「意欲」です。

オリンピックの五輪旗の意味

 唐突に話は変わりますが、現在バンクーバーオリンピックの真っ最中です。子どもの家でも、幼児にも小学生にもオリンピックの活動が提供されています。皆さんは「五輪の旗」が何を意味しているかご存知ですか?五つの輪や、その色には3つの観点からの意味があります。一つ目は地球上にある5大陸です。アジア、ヨーロッパ、アフリカ、オセアニア、そして南北アメリカの5大陸です。(南極大陸には国がありませんから含まれません) 2つ目は地球上にある自然です。青の輪は「水」です。黄色の輪は「砂」。黒の輪は「土」。緑の輪は「植物」。そして、赤の輪は「火」を表します。3つ目はオリンピックはスポーツの祭典ですから、そのスポーツの5大鉄則が表されています。それらは、体力、水分、栄養、技術、そして情熱です。この「情熱」こそが「意欲」です。いくらすばらしいテクニック、技術があっても「意欲」がなければ結果にはつながりません。これはスポーツに限ったことではありませんね。私たちの人生において「意欲」がなければ無為に時間を過ごしているだけになってしまいます。

意欲のスイッチをONにする
中学校の理科の教科書には、「親から受け継いだ遺伝情報の違いによって、子に様々な形質が現れる」と書かれています。決して誤りではありませんが、実は一人ひとりの持っている遺伝情報にはほんの僅かな違いしかありません。一組のヒトゲノム(全遺伝情報)が持つ情報は約32億とされています。このうち一人ひとりの違いは何と0.5%ほどしかありません。たった0.5%にもかかわらずオリンピックに出るようなすばらしい運動能力を持つ人もいれば、優秀な頭脳を持つ人もいる。すばらしい絵を描く人もいる。歌の上手な人もいる。人によってずいぶん異なる姿をこの0.5%以上にかもし出しているように思えます。
なぜ、持っている遺伝情報はほとんど同じなのにこんなに能力に差が出てくるのでしょうか。これが遺伝子のスイッチのON・OFFの違いなのです。一人ひとりはとてもたくさんのスイッチを持っているのです。しかしある人はそのスイッチがあまりONにならずに過ごしている。でもある人は非常にたくさんのスイッチがONになっている。このON/OFFの違いが能力の差、有能の違いになって現れてきます。
意欲のある子どもは自分からどんどん学びます。知識もどんどん増え、能力も伸びていきます。自分から様々なことを知ろうとします。「もっとやりたい」と言ってきます。
発想も豊かになり、何事にも積極的に取り組んでいきます。一方で意欲のない子どもは常にボーっとしていて、何事にも消極的です。意欲のある子どもとは差が広がるばかりです。でもその姿はその子どもの本来の姿ではないことは確かです。決して幸せではないでしょう。
私たち大人の役割は、子どもの意欲のスイッチをONにしてあげることなのです。しかし、「もっとやる気を出しなさい」といくら言っても実際にはなかなか意欲的にはなりません。
どうすればスイッチをONにできるのでしょうか。それはシリーズ第3回でも述べていますが、子どもへのポジティブ(肯定的)な接し方によってスイッチはONになります。  小学生になると単元が終わるごとにテストがあります。算数のテストで子どもが60点を取ってきたとしましょう。その時に、「何、この悪い点は。お母さん小学生の時にこんな悪い点取ったことなかったわよ。あなた、本当に算数ができない子ね。」とつい叱ってしまう。(特に親が優等生だった場合によく起こりがちな光景です)これはネガティブ(否定的)な接し方です。子どもは、「ぼくは算数ができないんだ。もう算数なんかやりたくない。」と思い、スイッチをOFFにしてしまいます。
でも反対に、「60点も取れたの。すごいじゃない。もう少し頑張れば今度はもっといい点が取れるかもしれないわね。」と励ますと、その子の中で、「60点でがっかりしていたけれど、なんだかやればできそうな気がしてきた。やってみようかな。」という気持ちが生まれ、スイッチがONになるのです。これがポジティブ(肯定的)な接し方です。日本ではどちらかというとネガティブな接し方がまだまだ多いと思います。なぜならば、これまでの日本の教育は一方的にあれをやれ、これをやれと山のように課題を押し付けるネガティブな方法がほとんどだったからです。こういった接し方や方法は知らず知らずの内に子どもの意欲を失わせてしまっていることになります。
モンテッソーリは環境をとても重視しますが、私たち大人も人的環境として大きな影響を子どもに与えます。子ども意欲のスイッチをONにしてあげるような人的環境にならなければいけません。

幼児期に身に付けたい学力につながる大切なこと

 子どもの家の先生達は、「子どもに任せる」を到達点に設定して、子どものどうしてもできないところを援助する姿勢を基本としますが、これは誤りを放置することとは異なります。特に小学校以降の学力に直結する誤りは見つけるたびにこまめに注意することがあります。それらは特に以下の2点です。
・ 椅子の腰かけ方
・ 鉛筆の持ち方
 「えっ?」と思われるかもしれませんが、これらは確実に学習意欲に直結します。
 正しい姿勢で椅子に腰かけて話を聞く。本を読む。文字を書く。書く際には正しい鉛筆の持ち方をする。日頃あまり気に留めないことかもしれませんがとても大切なことです。
 現在小学校、35人~40人学級で正しい鉛筆の持ち方をしている子どもは1割程度だというデータがあります。つまり、たった3人か4人しか正しく鉛筆を持っていないということです。
 鉛筆の持ち方が悪いと、正しい字が書けないことを初めとし、筆圧が弱くなって書いた字も読みにくくなります。さらに書いていてすぐ疲れるので、長い時間書くことができず、姿勢も悪くなるという悪循環が生まれてきます。最終的には集中力も低下し、学習意欲にも悪影響が出てきます。
 椅子に腰かける姿勢が悪い子どもも目立つようです。短時間ならよい姿勢を保てても、時間が経つとふにゃふにゃと机に突っ伏してしまったり、椅子からずり落ちたりと姿勢が崩れてくるのです。このような状態の子どもは「低緊張児」と呼ばれます。何とクラスの5~6割の子に見られるというデータがあります。
 いくらスイッチがONになっても、それ以前に身に付いていなければならないことがおろそかになっていれば意欲は空回りに終わってしまいます。
 親であれば小学生になって勉強ができるようになってもらいたいと誰もが思います。しかし、その勉強だけに目が向けられてそれ以前に大切なことが獲得できていなければ、いくら勉強を頑張らせても効果はあまりありません。これも発達は連続するということに大いに関連することです。
 ちなみに、鉛筆の持ち方とお箸の持ち方実は同じです。お箸の持ち方は鉛筆の持ち方に薬指を一本足すだけです。ですから鉛筆の持ち方の練習はお箸の持ち方の練習にもなります。一緒に練習すれば相乗効果が見られるでしょう。逆に鉛筆の持ち方が悪いと、お箸の持ち方も悪くなります。その逆もまた然りです。
 お箸の持ち方にしても、鉛筆の持ち方にしても、椅子の腰かけ方や姿勢にしてもご家庭で配慮いただけることばかりです。
 「そうじゃないだろう。」とか、「また違った持ち方をしている。」と叱るのではなく、(これはネガティブな接し方です) 「こうやってもつといいよ。」というモデルを根気強く見せてあげてください。そして、できた時に大いにほめてあげる。これがポジティブな接し方です。

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シリーズ 8 : 2011年05月 東日本大震災に思うこと
シリーズ 7 : 2011年01月 幼児期に身に付けなければいけこと
シリーズ 6 : 2010年06月 サッカーとモンテッソーリ教育~子どもに対する心得~
シリーズ 5 : 2010年02月 春の訪れと子どもの巣立ち
シリーズ 4 : 2009年12月 男の子と女の子の違い
シリーズ 3 : 2009年09月 Positive Thinking (前向きな発想)
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